Service 偕行社慰霊祭のご案内

令和4年度 偕行社慰霊祭の実施

これまで実施していた市ヶ谷台慰霊祭、月例参拝等を一本化し、今後毎年4月17日に「偕行社慰霊祭」として実施することになりました。

去る4月17日、靖国神社本殿において偕行社森 勉理事長以下多数の会員が参集し、まず市ヶ谷防衛省殉職隊員の碑に参拝し、引き続き靖国神社本殿にて慰霊祭を催行いたしました。
 
森 勉理事長の祭文は以下の通りです。
 
偕行社慰霊祭 祭文
本日 四月十七日は、明治維新以降近代国家として発展するわが国が、国軍健軍後初めての国運をかけての対外戦争である日清戦争終結の日であります。爾来、明治・大正・昭和のわが国防衛のために尊い一命を捧げられた多くの陸軍将兵とともに海軍将兵の戦没者の御霊(みたま)が祀(まつ)られるここ靖國神社において、「第一回偕行社慰霊祭」を執り行うにあたり、ご参列の皆様を代表して、謹んで祭文(さいもん)を奏上いたします。
今からさかのぼること概ね一五〇年、ペリー来航という軍事力を背景とした開国・開港の要求、二回の下関での敗北、薩英戦争の経験から、近代的な国づくりと欧米列強の軍事力に対抗し得る近代的な国軍の必要性を痛感した時(とき)の明治政府は、明治二年兵部省を設置し、軍事制度と組織の整備に着手しました。明治五年には兵部省に代わり陸・海軍省が設けられ、明治六年徴兵令に基づく徴兵が開始され、わが国の国軍としての基礎が整えられました。この日本国軍の健軍からまもない明治七年には陸軍士官学校、明治八年には陸軍幼年学校がそれぞれ創設され、その翌年の明治九年には海軍兵学寮が改称されて海軍兵学校が開校しました。
陸軍士官学校からは、約三万九千名の卒業生が陸軍の将校として巣立っていきました。陸軍将校の方々は、明治十年の東京九段を皮切りに全国各地に設立された『偕行社』において、親和・研鑽に努められ、明治・大正・昭和にわたるわが国の近代国家建設の過程において、日本陸軍の中枢として国家存亡にかかわるわが国の枢要な軍事の任にあたられ、わが国の脊柱としての役割を果たされました。
特に、明治以降の日清戦争から大東亜戦争までの数次に亘る戦争に際しては、多くの陸軍将校の方々は、「国を護る志」のもと、伝統ある祖国の将来にわたる国体の護持と繁栄、そして安寧(あんねい)を希(ねが)い、北は酷寒不毛の地、南は酷暑瘴癘(こくしょしょうれい)の地に赴き、陸にまた空において、勇戦敢闘して祖国に殉じていかれました。その数は約八千余柱に及びます。愛する家族を故国に残して異国の地で敢然と散って逝かれた陸軍将校の方々と一家の柱を失い後に残されたご遺族の方々の深い悲しみに思いを致すとき、今なお万感胸に迫るものがあります。
同じく、海軍兵学校を卒業された約一万一千名の海軍将校の方々は、太平洋などの海・空戦において奮戦敢闘して、約四千名の方々がわが国防衛のためにひたすら「国安かれ」の一念のもと、祖国のために殉じられました。また、学徒や女子挺身隊などの多く方々が勤労動員中に軍需工場で亡くなられました。このような多くのかけがえのない方々を失ったことは、ご遺族はもとより、国家にとって誠に大きな痛手であり、悲痛の念に堪えません。
今日、わが国国民が享受している民主主義国家としての平和と繁栄は、明治以降の国家存亡の危機に際して、「国を護る志」を持ってわが国の存立を担う崇高な職務に殉ぜられた多くの方々の国のために尽くすという無私の献身により築かれた礎の上にあると言っても過言ではありません。改めて、ここ靖國神社に祀られる陸軍将校を始めとする全ての御霊(みたま)に謹んで哀悼の意を表しますとともに、限りない尊崇と感謝の誠を捧げます。
現在、遠く欧州においては、核保有国が通常軍事力を行使して隣国の体制の変換を求める軍事侵攻事態が生起しておりますが、世界はこれを抑止できない状況です。翻って、わが国周辺には核保有国が存在しています。わが国を取り巻く安全保障環境は極めて厳しい状況にあると認識せざるを得ません。
このようななか、同じ「国を護る」という強い意思をもつ陸上自衛隊などの元幹部自衛官に継承されていく偕行社は、先人から託された歴史と伝統・文化に恵まれたこの素晴らしい祖国日本を護るため、今後は戦前の陸軍将校の皆様の御意志を受け継いで、陸上自衛隊の退官者の組織として、わが国の陸上防衛にかかわる安全保障の充実発展に尽力するとともに、陸上自衛隊を支援してまいります。
一方において、先の大戦が終結してから長い歳月が流れ、今や戦後生まれの世代が国民の主力を占めるようになり、平和と繁栄に慣れるうちに、戦没者に対する敬意と慰霊の心が薄れつつあることが憂慮されます。更に、国のために尽くす責任感の希薄化と国民道義の頽廃(たいはい)は大きな懸念であります。偕行社は、本日のこの慰霊祭をとおして、国のために殉じられた方々の慰霊・顕彰と国民一人一人の「国を護る志」の大切さをしっかり普及し、後世に受継いでいかなければならないと決意を新たにするものであります。
 
先般の令和の御代(みよ)の幕開けに伴いご譲位あそばされた上皇陛下は、御即位以来三十年、戦没者の慰霊には格別の大御心(おおみこころ)を寄せられ、国内外にわたり慰霊の旅を続けてこられました。偕行社は、この上皇陛下の戦没者の慰霊に対する強い思し召しにそうよう、尊い一命をわが国のために捧げられた方々の御霊(みたま)の慰霊・顕彰が、世界の近代国家と同じように、国家として、斎行されるよう提言して参ります。併せて、陸上自衛隊などの元幹部自衛官に継承される偕行社として、今後同じ「国を護る志」を持つ現職陸上自衛官などが事に臨んで任務遂行中に亡くなった場合、国家としての慰霊・顕彰が整斉と実施されるよう同じく提言していく所存であります。
わが国の防衛のために尊い一命を捧げられた陸軍将兵、海軍将兵、更には戦争において国のために亡くなられ学徒、女子挺身隊員などの英霊を慰霊・顕彰し安らけく神鎮(かみしずまり)ますことを祈念するとともに、感謝の念を捧げ、この記念すべき日の慰霊の言葉といたします。

令和四年四月十七日
公益財団法人偕行社 理事長  森 勉